皿割りまくり日誌

何かにつけて皿を割りがちな20代

海底よりずっと険しい場所へ 6/2(Fri)for example you sell the sea@SOCORE FACTORY

6/2(Fri) for example you sell the sea @SOCORE FACTORY


for example you sell the seaと言えば、暗く、激情的で、自分自身がこれまで目を逸らしていた内省をえぐるような楽曲で独自の世界観を確立しているロックバンドである。

for example you sell the seaの音楽の中に「救い」はない。と私は思う。

youtu.be

 

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『浜辺』と『負債』を聴いていると、寒々とした冬の海が見える。

荒れ狂う海を前にした自分は、何もせずに佇んでいたり、

腰まで冷たい海に浸かって、言葉にならない声を上げていたり。

 

そしていつも、「救いがないことが唯一の救いなのだ」という文豪・坂口安吾の言葉を思い出す。

 

いつか救われる、楽になる、そう信じて出口のないトンネルをさ迷うことがどれだけ絶望的なことか。

はじめから「救いなんてないのだ」とわかっていれば、出口を探さずに済む。

あるかどうかもわからない「救い」にすがらずに生きていける。

 

for example you sell the seaの音楽は、聴く者を強くする。

果てまで落ちた底で、「これが全てだ」と言わしめる強さを与えてくれるのだ。

 

そんな中、6/2、SOCORE FACTORYで、私は目撃してしまったのである。

 

この日は新曲ばかりのセットリストで、MVとなっている『浜辺』も『負債』も演奏されなかった。

aikoみたいな曲やるから楽しみにしてて」

そんなリョーイノウエ(Ba)さんの言葉が頭をよぎったのは2曲目に差し掛かった時だった。

少し黄みを帯びた照明がぱ、ぱ、と移り変わり、ステージを照らす中、

飛び込んでくるリズミカルで「キャッチー」なフレーズ。

どきどきした。

もちろんテトラポットを登るような爽やかな海の風景とはほど遠い。

それでも、彼らはもう海の底にはいなかった。

腰まで浸かっていた海から出て、じっと海を睨み付けている。

 

彼らが海底よりずっと険しい場所へ進もうとしていることをまざまざと見せつけられたのは、その日最後の曲となった『カーテン』だ。

『浜辺』や『負債』を思い出させるような仄暗い音楽。

それでいて、この日序盤から感じていた「軽やかさ」は確実に聴く者を海の底から引きずり出そうとしていた。

赤い照明の中、メンバーの誰も前を見ない。

ボーカルの熱く、それでいて繊細すぎる歌声だけが真っ直ぐ観客を見ていた。

海底から這い出たとして、依然として目の前の海は荒れ狂っているのだとわかる。

 荒れ狂う寒々とした海に、溺れるでもなく、佇むでもなく。

 

この夜、for example you sell the seaは海の底から浮上した。

ついに「救い」を見つけてしまった彼らは、寒々とした海の底よりずっとずっと険しく、荒れ狂った場所へ歩を進め始めたのだ。

新しい場所へ辿り着いた時、もう一度『浜辺』や『負債』のような「救いのない」曲を披露したとしたら、どうなるのだろう。

これまでより更に激しく、内省をえぐられる瞬間を心待ちにしてしまう自分がいる。

 

for example you sell thesea

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